単語を聞いて理解できる「受動的ボキャブラリー」と自ら使いこなすことのできる「能動的ボキャブラリー」があるけれど、通訳をする上ではどちらも重要。
聞いて理解出来なければ英語から日本語への通訳で困ることがあるのだから、知らない単語はゼロに近くする努力は必要だと思う。そういう意味で通訳をする上で必要な単語レベルは、アングロサクソン系国家国民の学者レベル、外交官レベルだというのが個人的な感覚。
受動的なボキャブラリー力が、能動的なボキャブラリーを必ず上回るから、知っていても使える単語は少なくて当然だと思う。けれど同時に言えるのは、受動ボキャブラリーのレベルを上げなければ、能動的ボキャブラリーのレベルは上がっていかないということ。
かつ通訳者であれば、この受動ボキャブと能動ボキャブの差は埋めていく努力が必要だと思う。
英語には「パワー単語」という一語で見事に言い当てる単語がきちんと存在している。そういう単語を知っていれば知っているほど単語の節約になって同時通訳では楽だし、聞き手にしっかり伝わる。身近な例だとelaborate「詳しく話す」という単語。talk in detailsでもいいけれど、一語で伝わる。
この能動ボキャブラリーレベルは、単語帳をひたすら見ていても、上がっていかない。リプロダクションや音読、シャドーイングをやって「この使い方良いな」と引っかかれば、自分が通訳する時に運よくスルっと出てきたりする。
が、個人的には、コップの水が徐々に溜まってあふれだすように、インプットを増やしていってある程度まで来るとアウトプットとなってあふれ出すということも、結構経験している。新聞や英雑誌、ポッドキャストなどなど、内容重視でインプットを増やしていくことで、忘れた頃に定着している。でも定着するには何度も出会う必要があるから、ある程度の量は必要だろうと思う。
この方法は、一晩でお悩み解決という方法ではないけれど、確実に英語力がつくと実感している。自然な英語が耳から目から肌から、細胞に入っていく感覚。これは焦ってはいけない。日々実力が試される環境で仕事をしている通訳者にとって、すぐに結果が出ないのはもどかしいことだけれど、熟してものになったものはなかなか剥離しないだろうと思っています。