通訳者Mのブログ

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日本語から英語の同時通訳の処理の仕方

同時通訳はスピードとコンパクトさ、そして後手にまわらないことが大事です。そしてそれは結構ボクシングにも似ていると以前書きました。

leogirl.hatenablog.jp

 

今回はコンパクトさについて。

同時通訳でコンパクト、というのは文章の始まりから句点まで(マルまで)が短いこと。

 

同時通訳では聞こえてきた順にしかスピーカーの言いたいことは見えてこないので、普通に英語の文章を作るときのようにはいきません。同時通訳そのものやトピックに慣れ親しんでいる場合は、少し待って普通の英語の文章のように整えて出すことも可能です。

 

でも最初からそれを綺麗に文章を作ろうとしてはいけない。

なぜか?

自分の作っていた文章通りにスピーカーが話してくれて必要な単語が収まることは少ないからです。そうすると、作り始めていた文章と、途中からスピーカーに引きずられて作った文章が合致しないのです。

 

だから、同時通訳は聞こえてきた順番で、理解できる塊ごとに文章を作っていき完結させる。そうすると、どのような文章が来ても大抵は対応できます。

日本語と同じ品詞で、同じ構造の文章を作ろうとしても、日本語のような英語になってしまいます。

 

 

これは実際の例です。

昨日、プーチン大統領が、ベラルーシとの共同記者会見で、すべての目的が達成されるまで軍事作戦は終わらないと述べ、侵略が長期化する見通しとなりました。

 

これを頭から聞いていると、まず「プーチン大統領が」。

 

プーチンが何をしたのか分からないから文章は作れないな。。とりあえずもう少し聞こう。。』

 

何も言わずに待っていると、「~記者会見で、」が出てくる。

『ここをまず訳してみるか』

@ the joint press conference with Beralus 

 

英語を話している間に、「すべての目的が達成されるまで」と始まる。

 

ここまで来ると、もし、背景知識がない場合、『プーチンが言ったの?』『誰が達成するの??』などなど考え始めてしまい、『もう待てない!えいやッ』と、

til all objectives are met

と訳すとします。

 

これを英語だけ聞いている人は、

At the joint press conference with Beralus, til all objectives are met...

 

と聞こえてくるわけです。聞いている人は、意味の通る文章になっていないので、スッと理解できません。

 

もう一度例文。

昨日、プーチン大統領が、ベラルーシとの共同記者会見で、すべての目的が達成されるまで軍事作戦は終わらないと述べ、侵略が長期化する見通しとなりました。

 

昨日はすぐに出します。文脈もないですから、頭にとめておく必要はありません。

プーチン大統領が~記者会見で」を聞いた瞬間に、プーチンとルカシェンコ大統領が二国の国旗を背にしてpodiumに向かって話している姿が浮かびます。

ここで『プーチンベラルーシと記者会見した』と言ってしまうのです。

President Putin held the joint press conference with Beralus

 

その間に次が聞こえてきます。

「すべての目的が達成されるまで軍事作戦は終わらないと述べ」

主語はプーチンなのでラッキー、そのまま『そして述べた。すべての~終わらない』

held に続いて and said that their operation wouldn't end till all objectives were met

 

つなげると、

 

 

Yesterday President Putin held the joint press conference with Beralus /and said that their operation wouldn't end till all objectives were met./

 

ハイフンごとに文章がコンパクトです。

通訳者も頭にとめておく文章が少ないから楽です。楽ですから力まないで済みます。

自分の作文能力を超えて(長く作りすぎる)、もしくは、逐次通訳のように同時通訳しようとすると、頭にとどめておく情報が多くなり苦しくなる

 

長いものには巻かれろと言いますが、同時通訳は流れに逆らわず、聞いたら後回しにせず順番に処理していくことが、聞いている方も、通訳する方も楽なんじゃないかなーと思います。